現在は退職していますが、私は大学卒業後からの約8年間、地方公務員として市役所で働いていました。
そして、その8年間のうちに2回市役所間を転職しています。
多くの公務員の方は、一度公務員になってしまえば、定年までその組織で働き続けることになると思います。
しかし、現役の公務員の方でも様々な事情で転職しなければいけない・転職したい方も多いかと思います。
そこで、公務員から公務員への転職、とりわけ市役所から市役所への転職の実態について、私の体験も交えながら解説させていただきます。同じような境遇の方の参考になれば幸いです。
市役所から市役所への転職は可能
まず、結論から述べますが、冒頭でも私の経歴を書いているように、市役所から市役所への転職は十分可能です。
一般的には、一度公務員になってしまえば、退職するまで同じ職場で働き続けるのが普通だと思います。特に、市役所などの地方公務員であればその傾向が顕著と感じます。
しかし、結婚や両親の介護など、様々な理由で今の仕事を辞めなければいけない方もいらっしゃるかと思います。または、働いているうちに別にやりたいことができて、転職したいと考えている方もいらっっしゃるかもしれません。
私は大学を卒業してから、22歳で採用者数200人程の政令指定都市の採用試験に合格し、2年勤務したのち、同じ都道府県内の一般市に転職しました。そしてさらにその3年後、別の一般市へ転職しました。
現在は既に市役所を退職していますが、大学卒業後からの約8年間のうちで、3つの市役所を渡り歩いています。勿論、いずれも臨時職員等ではなく、正規職としての採用で働いていました。
市役所から市役所への転職は難しいという声をよく耳にしますが、しっかりと対策や準備を万全にしていれば、転職できる可能性は十分にあります。
転職の理由付けは?
市役所から市役所への転職活動で、最も困ることと言えば、転職の理由付けだと思います。
実際、私自身もこの転職の理由を面接でどのように説明するかを非常に悩みました。
特に、市役所から市役所からの転職の理由付けが非常に難しいです。
例えば、市役所から県庁などの大きな機関に転職したい場合や、地方公務員から国家公務員に転職したいような場合は、仕事の種類も大きく変わってくるので転職の理由も割と言いやすいです。
しかし、市役所から市役所の転職の場合は、仕事の内容も殆ど変わらないので、なぜA市からB市に転職する必要があるのか面接でも色々突っ込まれます。
しかし逆に言えば、そこをしっかりと固めていければ、市役所から市役所への転職も十分可能になります。
ちなみに、私の場合ですが、1回目は政令指定都市から一般市への転職でした。はじめの政令指定都市は、大学在学中に何となく受験して合格してしまい、政令指定都市なので知名度もあるので『まぁいいか』という気持ちで入庁しました。しかし、政令指定都市ということもあり規模も非常に大きな自治体なので、自分が入庁する前に抱いていた『地域に密着した仕事』をするということはちょっと難しいのかなと、働く中で感じていました。そこで、より地域の方と密になって仕事がしたいという理由で、政令指定都市から一般市への転職を決意しました。
2回目は、一般市から一般市への転職でした。その理由としては、結婚して家を引っ越す必要があったからです。頑張れば転居先から通勤することも可能でしたが、災害時等の対応のことも考えて、転居先から近い職場の方が良いと判断して、転職活動に臨みました。1回目の転職は規模の異なる自治体への転職でしたので、仕事の内容を理由にして面接に臨むことができましたが、2回目の転職は同じような規模の自治体でしたので、理由付けに非常に苦戦しました。しかし、転職活動時の面接でも、正直に家庭の事情であるという理由を説明し、合格を勝ち取ることができました。
私が2回の市役所間の転職活動を通して感じた合格のコツは次の2点です。
- 正直に理由を話す
- 堂々と話す
まず、面接の際に、転職の理由は正直に話しましょう。きれい事などを並べて説明しても面接官にはすぐに嘘だと分かります。それよりは、自分の言葉でしっかりと本音を語る方が面接官の心に響きます。もし、転職理由がネガティブな理由なら、ポジティブな言葉に言い換えましょう。
2つめは、面接では堂々と面接官の目を見て話すことを心がけましょう。転職活動を負い目に感じることは全くありません。しっかりと面接官が納得できるような理由が固まっていれば、面接官の心にもきっと響きます。おどおどと話していると、不安な気持ちが面接官にも伝わります。背筋を伸ばして堂々と話すことが大切です。
以上2点の合格のコツを書きましたが、抽象的でよく分からないという方もいらっしゃるかと思います。しかし、私はこれだけをしっかり意識しながら面接に臨めば、合格できる可能性はグッと上がると思っています。
前職で同じ仕事をしていたということは、市役所という仕事の内容を知っているということでもあるので、他の受験生よりも大きくリードしている状態だと思っています。実際に、私は面接でそこを結構突かれました。しかし、それは他の受験生とは差別化を図れている点であるので、そこをアドバンテージと捉えて、堂々と面接に臨むことが合格への近道だと考えています。
一般の採用試験を受験
市役所から市役所へ転職するには、採用試験を受ける必要があります。これには、主に2通りの方法があります。
- 一般の採用試験
- 社会人経験者の採用試験
一般の採用試験は、大卒予定者や民間企業の転職組の人などと同様の内容です。一般的な内容は、筆記試験と面接試験、集団討論などです。社会人経験者の採用試験は、即戦力の人材を募集する枠であり、主に民間企業経験者をターゲットにしていますが、公務員経験者も勿論受験可能です。
大きく2つの採用試験の方式がありますが、私はいずれも一般の採用試験を受験して採用を頂きました。
民間企業の転職組と同様に、市役所職員も働きながら採用試験を受験することができます。働いている市役所を退職する必要はありません。私も市役所で働きながら、別の市役所の採用試験を受けていました。退職してから採用試験を受験するのはかなりリスクが高いので、余程自身がある方以外はやめておいた方が良いかなと思います。
また、市役所の経験があるからといって、採用試験で優遇されたり不遇されたりすることはありません。他の受験生と全く同じ待遇です。
現在の勤務先にバレることはほぼ無い
市役所から市役所への転職活動において、『採用試験を受けたことが現在の勤務先にバレる可能性はあるのか?』ということが不安で一歩を踏み出せない方もいらっしゃるかと思います。
採用試験中に、受験している市役所が、勤務先の市役所に採用試験を受験している情報を伝える可能性は、ほぼ無いと言っていいでしょう。
昨今は個人情報の取り扱いも厳格になっていますし、余程のことが無い限りは採用試験中にバレることは無いでしょう。
ただ、100%バレないとは言い切れません。受験先と勤務先の自治体が近ければ、人事担当職員間の会議などで、ポロッと話が出てしまうかもしれません。そのようなリスクを考えるとキリがありませんが、わざわざ受験先の自治体が勤務先の自治他に問い合わせることはないと思ってもらって大丈夫かと思います。
ただし、採用試験に合格した後は、話が変わります。私の場合は特に無かったのですが、市役所から市役所への転職の場合、給与が引き継ぎになることがあるみたいです。その場合は、合格先の市役所と現在の勤務先の市役所間でやりとりが発生すると思うので、その際には現在の勤務先に、採用試験を受験していたことが分かってしまいます。
最終合格していない段階で、採用試験を受験している情報をバラされることは、余程のことが無い限りありませんので、安心してください。
まとめ:公務員から公務員への転職は十分可能
以上、公務員から公務員への転職、とりわけ市役所から市役所への転職の実態について、私の体験も交えながら解説しました。
公務員から公務員への転職を希望されている方の不安が少しでも解消できたのであれば幸いです。
採用試験の形式上は他の受験生の方と同じですが、公務員として働いてきた経験値は、面接等で活かすことができますし、面接官を納得させる理由付けができていれば、合格できる可能性はぐっと高まります。
公務員から公務員への転職は十分に可能ですので、転職を考えている方は、本記事を参考にしながら、準備をしっかり行ってください。