カメラには露出(撮影)モード(P・A(Av)・S(Tv)・M)という設定項目があります。撮りたい構図やシチュエーションによってモードの切り替えを行うのですが、カメラを始めたばかりの方にとっては少し取っつきにくく感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、初心者の方向けの記事として、露出モードの基本的な事項から、シチュエーション別での各モードの使い方などを詳しく解説させていただきます。
露出(撮影)モードとは
まず、露出モードとは何か?ということについて簡単に説明します。
適正な露出(明るさ)を求めるためには、絞り値やシャッタースピードなどの要素の値を決めていかなければいけません。
絞り値はF値とも呼ばれ、被写界深度を決める数値です。この値を調整することで、背景ボケを狙った写真の撮影が可能になります。
シャッタースピードはシャッターが開く時間を決める数値です。シャッタースピードを速くすると取り込む光の量が少なくなり、逆にシャッタースピードを遅くすると取り込む光の量が多くなります。これも適正露出を決めるための重要な要素です。
露出モードは各要素のうち、どの要素を自分で選択するか決める設定です。主に以下の4つのモードに分類されています。
- 全てカメラに任せてしまうプログラムオートモード(P)
- 絞り値を自分で決める絞り値優先モード(A・Av)
- シャッタースピードを自分で決めるシャッタースピード優先モード(S・Tv)
- 全ての要素を自分で決めるマニュアル露出モード(M)
メーカー毎に各モードの表記の仕方は違いますが、機能としては大体同じです。
プログラムオートモード(P)について
プログラムオートモード(P)は、適正露出(明るさ)になるように絞り値・シャッタースピードをカメラが自動的に設定してくれます。なので、特にシャッターを切るだけで、基本的に設定をいじらなくてもその状況に応じた適正な明るさで撮影することが可能です。
また、プログラムシフトといって、適正露出を維持したまま、絞り値とシャッタースピードの組み合わせを変えることも可能です。
カメラを始めたばかりの方はプログラムオートモード(P)で撮影されている方も多いかと思います。勿論その状況に応じた適切な組み合わせをカメラが選んでくれるのでとても便利なものなのですが、以下の絞り値優先モード(A・Av)やシャッタースピード優先モード(S・Tv)も使いこなせるようになれば撮影がもっと楽しくなるはずですよ!
絞り値優先モード(A・Av)について
絞り値優先モード(A・Av)は、絞り値(F値)を撮影者が設定し、それに応じてカメラ側で適正露出になるようにシャッタースピードを設定してくれるモードです。先ほどのプログラムオートモード(P)では、状況に応じて絞り値やシャッタースピードが変動して適正露出を実現していますが、絞り値優先モード(A・Av)に関しては、絞り値は撮影者が決めた値で固定され、適正な明るさになるようにシャッタースピードをカメラが決めてくれる点で違いがあります。
絞り値を変えると、ピントが合って見える範囲(被写界深度といいます)が変わります。絞り値(F値)を小さくするほどピントの合って見える範囲は狭くなります。ピントが合う範囲が狭くなると、背景や手前をボカすことができます。
この『背景ボケ』に魅力を感じて一眼レフカメラを買った方は多いかと思いますが、絞り値(F値)を固定できる絞り値優先モード(A・Av)を使いこなせば、背景ボケを狙った写真が撮影できますよ。
逆に絞り値を大きくすると、広範囲にピントが合っているように見えてきます。風景写真など、全体にピントを合わせたい時は絞り値を大きくします。いわゆるパンフォーカス撮影ですね。
私も普段は絞り値優先モード(A・Av)をメインで使っています。簡単にプロっぽい写真が撮れるのでオススメですよ!
シャッタースピード優先モード(S・Tv)について
シャッタースピード優先モード(S・Tv)は、シャッタースピードを撮影者が設定し、それに応じてカメラ側で適正露出になるように絞り値(F値)を設定してくれるモードです。先ほどの絞り値優先モード(A・Av)と比べると、固定する要素が逆になっていますね。どちらのモードも適正露出(明るさ)になるようにカメラ側で設定してくれますが、固定する要素を変えることで、写り方や表現に大きな違いが出てきます。
シャッタースピードを速くすることで、被写体ブレを防ぐことが出来ます。動きの激しいスポーツや動物の撮影の際に使われることが多いです。
逆にシャッタースピードを遅くすることで、滑らかな水流の表現や夜の車の軌道の表現などの撮影をすることが可能になります。写真好きの方は滑らかな滝の写真などを一度は見たことはあると思うのですが、それらの写真はシャッタースピードを遅くしたことにより表現できているものなんです。
このようにシャッタースピードを変化させることで、様々な被写体や表現に対応することが出来ます。
また、光量を抑えることができるNDフィルターというフィルターを使用することで、シャッタースピードを非常に遅く設定することができます。そうすることで、通行人の存在を薄くしたり、シュワシュワとした幻想的な水辺の表現などの撮影が可能になるんですね。
マニュアル露出モード(M)について
マニュアル露出モード(M)は、絞り値とシャッタースピードを撮影者自身で全て設定します。上記の3つのモードは全ての要素、または一部の要素について、カメラ側で適正露出になるように設定してくれましたが、マニュアル露出モード(M)では、全て自分自身で設定する必要があります。そのため、写真の表現の幅は非常に広いといえます。
しかし、絞り値とシャッタースピードの組み合わせを誤ってしまうと、明るすぎる写真になってしまったり(露出オーバーと言います)、逆に暗すぎる写真になってしまったり(露出アンダーと言います)します。
マニュアル露出モード(M)は自由度も高く、使いこなすことが出来れば自分の思い通りの表現ができるのですが、各要素をしっかり理解できていないと使いこなすことが難しいモードだと思います。そのため、初心者の方には扱うのが難しいかもしれません。
各露出モードの使い所について
露出モードによって写真の表現に違いが出てくるのですが、各露出モードの使い所についてまとめてみました。
Pモード | スナップ写真 |
Aモード | ポートレート・風景・商品・建築 |
Sモード | 動きの激しいスポーツや動物 / 水流・水辺・光の軌跡 |
Mモード | 花火・ストロボを使用した撮影など |
初心者におすすめの露出モードはズバリ絞り値優先モード(A・Av)!
プログラムオートモード(P)も気軽に撮影するという意味では悪くはないのですが、カメラの面白さを知るという意味では、まずは絞り値優先モード(A・Av)を使いこなしていただきたいと考えています。
理由としては、絞り値(F値)を自分で決めることで、被写界深度をコントロールし、その中で最適なシャッタースピードを出すための技術を習得していくことができるからです。
この設定ではこのような写真が撮れる、というような感覚をまずは掴んでもらうことがスキルアップの第一歩だと考えています。
そういう意味では全て自分で設定するマニュアル露出モード(M)の方がいいんじゃないかとの声もありそうですが、初心者の方がいきなりマニュアル露出モード(M)で絞り値やシャッタースピードを扱うことは難しいと思います。
まずは自分が選択した絞り値で最適なシャッタースピードをカメラに選んでもらい、感覚を身につけることが第一だと考えます。
まとめ
では、これまでに述べてきた各露出モードについて、簡単にまとめて終わります。
露出モード | 絞り値(F値) | シャッタースピード |
Pモード | × | × |
Aモード | ○ | × |
Sモード | × | ○ |
Mモード | ○ | ○ |
※撮影者自身で設定する場合は○、カメラ側で設定する場合は×
写真の表現の幅を広げるためにも露出モードの理解は必要不可欠です。各露出モードの概要を理解した上で、それぞれの特徴を活かしていきながらカメラライフを楽しんでいただきたいと思います。
では、良いカメラライフを!!^^